『ポケットモンスターミューツーの逆襲』はとんでもない傑作だった

映画
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しゃんぶるだんふぁんです。

最近、私が小学生の時に上映されたポケットモンスターの劇場版第一作目『ポケットモンスター・ミューツーの逆襲』を見返しました。

当時リアルタイムで劇場にも観に行きましたし、テレビでの放送でも観たのですが、ぶっちゃけてしまうとポケモンたちが泣くシーンでは確かに感動したけれど、正直なんでポケモンたちがあそこまで泣いているのか、そこからあっさりミューツーが退散してめでたしめでたし展開が、イマイチよくわからなかった記憶があるんですよね。笑

それゆえ、なんとなくの雰囲気でいい映画なのでは?ぐらいに思ってたのですが、今回改めて見返したことで「これはめちゃくちゃ傑作だ!!!」となったため、ブログを更新したくなりました。笑

今回自分なりに解釈した、これまでこの『ミューツーの逆襲』に対して抱いていた疑問

・どうしてミューツーは怒っているのか?
・どうしてポケモンたちは泣いたのか
・どうしてミューツーは心変わりしたのか

あたりを、自分なりに紐解いていきます。※映画のネタバレを含みます。
その前に、まずはこの映画を理解する上で重要になってくる、劇場未公開シーンについて解説します。

テレビ初放送で追加されたミューツーとアイツーの交流

実はこの映画には、劇場で公開されなかった未公開シーンをテレビ初放送時に追加したという背景があります。正直このシーンがなぜ公開時にはカットされてしまったのかってぐらい、この作品には重要なシーンだと思うので、解説していきます。

アイツーという少女

劇場未公開シーンには、アイツーという女の子が登場します。年齢はだいたい8歳くらいでしょうか? 彼女はフジ博士の死んでしまった娘、アイのコピーで、生まれる前の意識の世界でミューツーやほかのポケモンのコピー達と交流します。

ミュウのコピーがミューツーなので、アイのコピーはアイツーと呼ばれます。

アイツーとミューツーの交流

この物語はフジ博士という研究者が、発見されたミュウの体の一部から最強のポケモン、ミューツーをつくろうとするところから始まります。

ミューツーとアイツー(の意識ホログラム)は、生まれる前の意識が作り出した世界の中で出会い、交流します。その意識世界のなかには御三家(ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネ)のコピーもいて、一緒に遊んで過ごします。ミューツーはアイツーから人間、ポケモンの概念、自分たちがコピーであることなどを教わります。

アイツーたちとの別れ

ミューツー以外のコピー達の状態は不完全で、彼らは順番に消滅していきます。そしてアイツーも消えてしまいます。
ミューツーはアイツーが消えるときに目から涙を流しますが、ミューツーはそれがなんなのかを知りません。 アイツーはミューツーに、それは涙だと教えます。「生き物は自分の体が痛いとき以外は涙を流さない、悲しみで涙を流すのは人間だけだ」とミューツーに伝えます。

「ありがとう、
ありがとうあなたの涙 でも泣かないで
あなたは生きているの
生きているって、ね?
きっと楽しいことなんだから」

と言って、アイツーは消滅していきます。せつない。ミューツーはアイツーがいなくなったことで激しく動揺しますが、研究者たちに安定剤を投与されて長い眠りにつき、アイツーや交流したコピーポケモンたちのことを忘れていきます。

ここまでが劇場版の未公開シーンで、リメイク版のミューツーの逆襲 Evolutionでもこのシーンはカットされています。アマプラなどで配信されている元祖ミューツーの逆襲では、このシーンも収録されています。

どうしてミューツーは怒っているのか?

ミューツーが人間に怒りを抱く場面は2回描かれます。

・人間のエゴで自分が生み出された怒り(対フジ博士や研究者たち)
・人間の都合で自分が利用されることへの怒り(対サカキ)

ミューツーはアイツーから教えてもらったからか、生まれた瞬間から人間の言葉がわかり、目の前のフジ博士たちと会話をします。自分の父や母、神の概念まで理解しています。
さすがにアイツーがそんな概念を教えられるとは思えないので、なんで知ってんだよと思いますがそこはまあ置いておきましょう。

フジ博士に「この世で別の命を作り出せるのは、神と人間だけだ」と言われ、なんのために私は生まれてきたのだ!とミューツーはいきなりバーサクモードに突入し、研究所をぶっ壊します。

焼野原と化した研究所跡地にロケット団のリーダー、サカキさまが現れ、ミューツーはうまいこと言いくるめられ、今度はロケット団の悪事を手伝わされます。
サカキさまはミューツーに、戦いと破壊と略奪という物騒な任務を命じますが、実際にやっているのがケンタロス大量捕獲大作戦なのはシュールです。
そんなことに自身の超能力を使われたら、そりゃあミューツーも「私はなんのためにここにいる!」となるでしょうね。結局ミューツーは人間に利用されること、人間に作り出された自分はポケモンでも人間でもないことに怒り、サカキの元を去ります。そして、自分を作った人間たちへの逆襲を誓うのです。

つまり人間たちのエゴで生み出されてしまったポケモンが、自分の存在意義がわからずその怒りの元となった人間に逆襲するという、子ども向けアニメらしからん重めのストーリーだったのです。

どうしてポケモンたちは泣いたのか?

ミューツーは人間に逆襲するため、強そうなトレーナーを島に集め、己の強さで彼らと彼らのポケモンをけちょんけちょんにします。さらにはトレーナーたちのポケモンを奪い、彼らよりも強力なパワーを持つコピーを作ります。

そこになんとあの伝説のポケモン、ミュウが登場。ミューツーはミュウを倒して自分が本物になると言って、その場にいたポケモン全員が、本物VSコピーで戦い始めます。
サトシは本物とコピーが戦うのを止めようとして、ミュウとミューツーの攻撃を直で受けてしまいます。 攻撃を受けて動かなくなってしまったサトシに声をかけ、サトシを起こすためにピカチュウは何度も電気ショックを食らわせますが、サトシの反応はありません。

そんなサトシを見て、涙を流すピカチュウ。そうするとピカチュウだけでなく、その場にいたすべてのポケモンが涙を流し始めるのです。 当時子どもながらにこのシーンで感動したのは覚えていますが、そもそもポケモンたちはどうして涙を流したのかを考えてみます。
自分的には下記の2つの理由があいまってかなと思っています。

・サトシの状態に涙した
・悲しむピカチュウに感情移入した

自分達の戦いを止めようとしたサトシが動かなくなってしまった

ポケモンにもコピーポケモンにも感情があります。自分の分身と戦っているうちにわけがわからなくなって、さぞ辛かったことでしょう。そんな自分たちの戦いを体をはって止めてくれたサトシが動かなくなってしまったら、悲しくなるのも納得です。

動かなくなったサトシを見て悲しむピカチュウにもらい泣きした

もうひとつが、サトシの状態というよりは、ピカチュウに感情移入したパターンですね。 ポケモンでも人間でも、自分の大切なパートナーが同じ状態になったら当然悲しいので、動かなくなってしまったパートナーを悲しむピカチュウに共感します。実際に劇中では、ピカチュウが涙を流したあと、ほかのポケモンたちも涙を流しています。

あの場にいた、ピカチュウ、ゼニガメ、フシギダネ、リザードン以外はそこまでサトシとの関係が深くないはずなので、ピカチュウに感情移入の要素の方が強い気がします。

余談ですがこのシーン、サトシの仲間であるはずの人間ことカスミとタケシは全く泣いていません。アイツーが「悲しくて涙を流すのは人間だけ」と言っていたのに、人間、泣いてないやないかーい!!!人間よりポケモンの方が情に厚い生き物であることが判明する名シーンです。

どうしてミューツーは心変わりしたのか

私がこの映画をはじめてみたときに一番わからなかった、ミューツーはどうして人に逆襲するのをやめたのかという、この作品で最も重要な部分を考えてみます。自分の考察では

・人間は自分たちの都合でポケモンを生み出し利用する最低な生き物だと思っていたのに、その人間が自分を犠牲にしてまでポケモン同士の戦いを止めて、守ろうとした行動に衝撃を受けた
・本物とコピーが涙を流したこと

それぞれ解説していきます。

サトシの行動に衝撃を受けた

これはミューツー自身が「人間が私たちの戦いを止めようとした!?」的な台詞を発していることから考察できます。

ミューツーはこれまで、自分の野望のために勝手にミューツーを生み出したフジ博士や、自分の目的のためにミューツーを利用したサカキのような人間を見てきたことで、人間は最低な生き物という価値観を持っています。

その人間が自分を犠牲にしてまでポケモン同士の戦いを止め、守ろうとする姿は衝撃だったでしょう。たしかにこの理由だけでミューツーが心変わりしたと納得ができれば、一応物語としては成立します。

ですが、あれだけ人間を憎んでいたミューツーが、サトシのその行動だけで「この世界にはいい人間もいるのか!逆襲やめます!!!」といとも簡単に心変わりするんだとしたら、あまりにもチョロすぎるし、正直これまでの戦いが茶番すぎるではないかとなってしまいます。

本物とコピーが涙を流したこと

ここで思い出してほしいのがミューツーに涙の意味を教えたアイツーの存在です。ミューツーはアイツーが消えそうになったときに涙を流し、アイツーはミューツーに涙のことを教えます。

ミューツーがこのポケモンたちの涙でアイツーのことを思い出したとされる描写は一切ないものの、潜在意識下で涙の意味を思い出したと考えると、物語が綺麗に繋がります。本物もコピーも、悲しいと涙を流す、つまり感情がある、それは生きていることの紛れもない証だということを感じ取ったのではないでしょうか。 本物もコピーも己の感情を持ち、個々の存在として生きているのだから、争う必要はないという結論に達したのではないかという考察です。

「ありがとう、ありがとうあなたの涙
でも泣かないで?あなたは生きているの
生きているって、ね
きっと楽しいことなんだから」

アイツーの台詞

こう考えると、ミューツーとアイツーの交流シーンは、この映画には絶対欠かせない要素だと思うのです。まあ当時はテレビ版で追加されたシーンを見ても、そんなこと考えつかなかったんですけどね。

ミューツーがアイツーとの交流を完全には忘れていない証拠

ミューツーがアイツーたちとの交流を完全には忘れていない伏線は、映画内にしっかり登場します。まずミューツーは、リザードン、カメックス、フシギバナのコピーを作っていますよね。

引用元:ABEMA

ミューツーはアイツーと出会ったとき、アイツー以外にもヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネのコピーたちと交流し、遊んでいました。 ミューツー自身は「トレーナーになった人間の誰もが最初に手に入れたがるポケモンの進化系だから」みたいなことを言っていますが、わざわざこの3匹のコピーを最初に作ったのは、このときの思い出があったからだと思います。

その証拠に、最初の御三家進化系のコピー達だけ、元のポケモンたちにはない独自の模様があります。この模様は昔ミューツーが遊んだコピーの3匹の模様と酷似しています。

ミューツーとアイツーの絆

ミューツーは生まれてきてからずっと、人間でもポケモンでもない自分は一体なんなんだという怒りを抱えていました。ここで、ミューツーがアイツーと初めて出会った場面を振り返ってみます。

ミューツー「だれ、きみ?」
アイツー「人間、でもあなたと同じみたいな存在」
ミューツー「人間?ぼくも、人間?」
アイツー「お話できるんだから、人間かもね
それとも私のポケモンだったりして」
ミューツー「人間?ポケモン?なにそれ、僕どっちなの」
アイツー「どっちでもいい、あなたも私も、同じみたいなもの」

この映画は前半が人間vsポケモンの対立構造、後半が本物vsコピーの対立構造で構成されていますが、ミューツーが生まれる前の意識世界で出会ったアイツーこそが、人間とポケモンの分断を和らげるキーパーソンとして描かれていることがわかります。

アイツーは、ポケモンと人間の垣根なく、ミューツーに接してくれた存在なのです。

ミューツーの問いに対するカスミのアンサーがすげえ

長々と解説しましたが、最後にカスミの台詞に衝撃を受けた話をします。ラストで、ミューツーは映画で起こった一連の出来事を、人間たちの記憶からなかったことにしてしまいます。

物語は波止場の場面に戻り、嵐で船は出せませんのシーン再び。そのときサトシが「でもなんで俺たちこんなところにいるんだ?」と言います。強いトレーナーとして招待されたときの記憶をミューツーに消されたためです。その問いに対してカスミが

さあ?いるんだからいるんでしょうね〜

と、小泉進次郎みたいな回答をしています。ただ、この何気ない返答がこの映画の伏線回収となっている気がしてきたのです。

そう、この映画でミューツーが繰り返し唱えていた、「私は誰だ、私はなぜここにいる」の答えはまさにこれなのではないかと。「生きているから、ここにいる」

生まれてきた理由や、何をするかやしないか以前に、生きていることそのものが大事。

ミューツーのように、なんのために生きているのだなど考える知能もない年齢のときに私はこの映画をみたので、当時はなにも感じませんでした。それこそ「いるんだから、いるんでしょうね〜」ぐらいの感じで生きていたと思います。笑

無邪気な子供時代は生まれてきただけで感謝され、いるだけで素晴らしい存在だった私たちが、だんだん何ができる、いい大学に通っている、いい企業に勤めている、いい相手と結婚しているなどの要素で存在価値を測られるようになっていき、ミューツーよろしく、自分はなんのために、どうしてここにいるのだというモラトリアムに突入します。

そんなモラトリアムをぶっ飛ばす答えが「いるんだから、いるんだよ」ですね(迷言)

まとめ

劇場版『ポケットモンスターミューツーの逆襲』の子供の頃にはわからなかったポイントを考察してみました。人から生み出されたポケモンが自分の存在意義を問うというテーマは、手塚治虫さんの『地上最大のロボット』(鉄腕アトム)や、浦沢直樹さんの『PLUTO』を彷彿させる内容で、今思えばかなり挑戦的な物語だと感じました。

この記事で『ミューツーの逆襲』を「前に見たことあったけど、もっかい見たくなったな!」と思ってもらえたら嬉しいです。 ミューツーの逆襲は、現在アマゾンプライム、UNEXT等で見放題配信されています(2025年12月時点)

AmazonPrimeVideo

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